天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「私が後宮妃に選ばれると決まったわけじゃないでしょ」

 私が平然とした面持ちで言うので、亘々は声を荒げて怒った。

「お嬢様を後宮妃に選ばなくて誰を選ぶっていうんですか! 自分の顔を鏡で見てくださいよ!」

「ええ……」

 ここまではっきり言われると否定することができない。身内びいきで美人に見えるのだろうと思うけれど、目立つ目鼻立ちをしていることは村の者たちの反応で自覚はあった。

「それじゃあ、用意をして一緒に逃げましょう」

「いいえ、私は残ります。二人共逃げたら、必ず追われます」

「そしたら亘々が後宮妃に選ばれてしまうかもしれないじゃない!」

 私が血相を変えると、亘々は渋面を作って呆れて言った。

「お嬢様、私の顔をよく見てください。こんな男みたいな容貌が妃に選ばれるはずないじゃないですか。それに、二十歳以下の女性を選んでいるらしいので、私は大丈夫です」

 男みたいな容貌と亘々は言うけれど、薄い顔をしているだけで化粧をすれば映えると思う。でもそんなことを言っても亘々は認めないだろう。

「二十歳以下……。そうね、それなら大丈夫ね。でも、隠れたとしても、私がいることを村の人たちが告げたら追われるんじゃないかしら」
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