天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
会ったこともない新皇帝に心の中で思いっきり罵倒した。

 なぜ関係のない民が政治に巻き込まれるのだろう。ただ、ひっそりと生きていただけなのに。

 たった一日で多くを失ったときのことを思い出し、奥歯を噛みしめた。

 悔しいとか、悲しいとか、そんな言葉じゃ表現しきれないほどの重い感情を植えつけた盾公を憎いと思う。

 その盾公を討った新皇帝も同じだ。権力に魅入られ、自分の欲のために多くの命を奪う。簒奪帝なんて、みんな似たようなものだ。

 日が暮れてきた。寒くなってきたので、上着を羽織る。外は静かだった。錦衣衛が山を登ってくる様子はないし、もう帰ったかもしれない。

 立ち上がり、音を立てないように慎重に歩き出した。完全な夜になる前に山をおりたい。山から村を見下ろせる場所に行き、村の様子を見てみることにした。

 すると、村がある場所から赤い光が放っていた。

(どういうこと?)

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