明日も君と、手を繋いで歩きたい

「お母さん!」

夕飯を食べているお母さんにソロりと近付くと、後ろから抱きついた。

「何?何よちょっと」

「お母さんいつも綺麗だね!」

「何?!突然気持ち悪いってー」

お母さんは嬉しそうに箸を置いた。

「今度友達……とライブに行くんだ」

「友達?友達ができたの?」

お母さんは口に手をやり、少し涙ぐんでいた。

何故なら前の学校では酷いイジメが原因で、仕方なく遠方の学校に入学した。

当然友達なんていなかった。

そんな自分から「友達と」なんて言葉が出てくるなんてお母さんは夢にも思ってなかったからだ。

「どんな子?優しいの?」

「まぁね……優しいよ、凄く」

「多分だけど……」

私は少しだけ昨日の夕方の事が頭によぎった。

「そう!良かったね」

「で、お小遣いなんだけど」

お母さんは何も言わず、急いで黒のバッグからクシャクシャの一万円札を渡してくれた。

「こんなに?!やった!」

「もしデートならご馳走してあげなきゃね」

「デート……何言ってんの?友達だよ」

「あはははは」

お母さんは笑っていたけど、優しい目で少し涙ぐんでいた。

毎日は大変だけどお母さんの子供で本当に良かった。

夕飯を済ませたお母さんは、鼻歌を歌いながらお化粧を済まし、仕事へと出かけた。

見送りが終わり、部屋に戻ると暗闇の中でスマホの画面が光っていた。

スマホを持ち、ベッドに沈みこんだ時、嫌な通知が目に入った。

それは自分が投稿しているSNSの通知だった。

「え?コメントが500件?」

急いで確認すると、先日投稿したスイーツの画像にコメントがついていた。

「キモイ」

「クズ」

「しね」

それは、クラスメイトからの誹謗中傷だった。

知らない間に匿名の自分のSNSを特定されていたのだ。

「また始まったか……」

「でもどうしてバレたんだろう」

頭をフル回転させたが、原因は思い付かない。

ベッドに沈む体が、更に重くなった気がした。

考え込む内に、そのままスマホを胸に置いたまま、眠りについていた。




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