パティシエ総長さんとコミュ障女子
出会い、からの逃走
「ねぇねぇ、双竜会って知ってる?」
「あー今一番強い勢力の不良グループってやつ?」
「それそれ!その双竜会の総長ってめっちゃイケメンらしいよ!」
「マジ~?てか今時不良グループの勢力とかあるんだね。小説の中くらいだと思ってた。」
5月上旬の陽気な日差しの中、本を読む私の後ろの席で女子たちが話していた。
興味はない。興味はないけどつい聞いてしまう。
高らかに、楽しそうに笑う彼女たちがうらやましかった。
自分で言うのもおかしいが、私は冴えない高校生だ。
仲のいい友達はいない。
そりゃ、昔は友達の数人くらいいた。
だけどみんな離れてしまった。
それに、私は苦手なんだ。
団体行動、対人、協調、愛想笑い。
ひとりで過ごすようになって悟った。
ひとりのほうが楽だ。
体裁なんて気にする必要がなかった。
「ねぇ、宮川さん!」
「わっ!」
━━━!
突然名前を呼ばれ、心臓が飛び出さんばかりに跳ねた。
「宮川さんはどう思う?双竜会の総長!かっこいいと思わない?」
……この子は、どうして私に話を振ったのだろう。
私がひとりでいて可哀想だから?
「…ごめん、興味ない。」
その子はちょっとだけ眉をひそめた。
「そっか……まぁいいや。」
…こんなつまんない奴でごめんなさい。