パティシエ総長さんとコミュ障女子
再会
わざわざ遠回りをして学校に行った。
整理のつかない心境にモヤモヤしながら、教室に入った。
御神楽竜司、怒ったかな。
どうしよう。
最悪の考えは、昨日の時点からあった。
「目をつけられた」
そんなことは絶対に嫌だ。
そんなことがあってはいけない。
大丈夫、顔は覚えられていないはず。
そう自分に言い聞かせようと努力を試みたが、無理だった。
いきなり自分のことを殴った女子の顔なんて、忘れないほうが難しいのではないだろうか。
そもそも、私は制服だった。
この時点で学校はすでにバレている。
今は、彼が相当記憶力のない人であることを願うことしかできない。
「っ〜〜〜!!」
頭を抱えた。
頼むから昨日のことは水に流して無かったことにしてほしい。
心からそう願わずにはいられなかった。
「宮川さんが頭抱えるなんて、珍しい」
突然頭上で声がして、肩がビクンと跳ねる。
恐る恐る見上げると、ポニーテルの女の子が私を見下ろしていた。
この子…昨日話しかけてくれた子だ。
いつも1人でいる私をよく気にかけてくれていて、助けてくれる。
私が言葉を返せたことは一度もないんだけど…。
彼女の名前は、原田蓮さんだ。
私が彼女について知っていることは…彼女は頭が良くて、社交的で、運動もできる方だということ。
よく考えたらそれくらいしかないんだ。
私がこの1ヶ月間、高校でいかに閉じこもって過ごしていたかが分かる。