パティシエ総長さんとコミュ障女子
涙で霞む視界の中、ゆっこが息を切らせながら駆けてくる。
その後ろから、瑠衣も走ってきた。
「凛!やっと見つけた!大丈夫だった!?」
遠くからだろうが、私たちの騒動を見たのだろう。
いかに慌てて走ってきたかが分かる。
「蓮と凛を見て急いで瑠衣を呼んできたんだけどっ…!」
「蓮、ツナちゃん!大丈夫?」
瑠衣が私たちの隣に跪いた。
頬が腫れて鼻血を出している蓮を見て、瑠衣の顔色が変わる。
「あいつら…何やってんだ…。」
瑠衣はすかさずポケットからティッシュを取り出し、蓮の顔に付く血を拭った。
「ツナちゃんはどこも怪我してない?」
瑠衣にそう言われて首を振る。
私は立ち上がって、瑠衣を見下ろした。
「ねぇ、瑠衣。」
低い声で呟く。
涙を拭い、瑠衣を睨みつけた。
「蓮がこうなっているのは、瑠衣のせいだから。」
「ちょっと、凛…!」
蓮が驚いて私を止めようとするが、構わず私は話し続けた。
「あんたがちゃんとしていないから!本当はあんたが助けに来るべきなのに!」
震える手を握って、瑠衣を叱る。
蝉が鳴く中、私は瑠衣の整った顔を見つめた。
「蓮と仲良くするならさ、責任持ちなよ!バカじゃないの?いつかこうなることも予想できなかったわけ?」
スラスラと言葉が出てきた。
蓮も、ゆっこも、瑠衣も驚いた顔をして声を発さない。