パティシエ総長さんとコミュ障女子
「ふふ、私、宮川さんの人間らしい表情、初めて見たかも。」
可愛い顔で微笑む原田さん。
「いつも、表情が引き締まっていて、ちょっと怖い印象があってね…」
クリっとした丸目の原田さんは表情の豊かな人だ。
話している最中も、話している内容に合わせて顔を顰めて見せたり、破顔したり、とても人懐っこそうな、私と正反対の表情をしている。
笑うと、八重歯が見え隠れした。
私は、ころころと表情の変わる彼女の愛らしい顔を、思わず凝視してしまった。
「ん?私の顔に何かついてる?」
キョトンとした顔で問いかけてくる原田さん。
慌ててブンブンと首を横に振った。
「そう、なら良いけど。ところで宮川さん、頭抱えちゃってどうしたの?」
突然振られた問いに面食らう。
「あっ…あ……え、え、えっと……」
言葉が詰まって、するすると出てこない。
対人関係が苦手な私特有のものだ。
原田さんが何かを察したように微笑んだ。
「大丈夫!言えなかったら無理しなくて良いから!私もね、人と話すのが苦手な時期があったんだ。全然変なことじゃないよ!」
唇を噛み締めてこくんと頷くことしかできなかった。
原田さんの1番すごいところは、このコミュニケーション能力と、人当たりの良さだ。
私には無いものを持っている。