パティシエ総長さんとコミュ障女子
昇降口、靴を履き替える私の肩を、誰かがポンと叩いた。
振り返ると、満面の笑みの蓮。
「一緒に帰ろ?」
か、感激ッ…!!
最近瑠衣ばかりで、私とあまり話していなかった蓮が一緒に帰ってくれるなんて。
ジーンと心に沁みる。
「あは、凛、めっちゃ嬉しそうな顔。最近は本当にごめん。私、瑠衣くんばっかりで凛ともゆっことも全然話していなかった…」
突然バッと頭を下げられて、困惑。
もう、恋の盲目から目が覚めたのだろうか…。
「だ、大丈夫、大丈夫。そりゃ、ちょっとは寂しかったけどさぁ…。」
私たちは学校を出て、帰り道を歩く。
今日はゆっこは相撲部の活動でいない。
「ね、今日、凛めっちゃカッコよかったよ。私、シビれちゃった〜!」
「あ、あはは……。多分黒歴史になるからできるだけ早く忘れてね…。」
「『2度と、蓮に近づかないで。』だって〜!きゃ〜かっこいい〜!イケメ〜ン!」
「ぎゃああ!あのセリフを思い出させないで〜!恥ずかしい!」
バシバシとお互いを叩き合う。
暫くぶりの蓮との会話がとっても楽しい。
竜司くんとは別の意味で安心できる。
他愛もない話をしながら、道を歩くのが、こんなに楽しいなんて。
笑いが絶えない。
そんな楽しい時間が過ぎる速さはありえないくらい速くて、私たちはいつのまにか竜司くんの店に着いていた。