パティシエ総長さんとコミュ障女子
「じゃあ、私今日もバイト……じゃないんだけどバイト…?するから。バイバイ!」
そう言って店のドアに手を伸ばす。
「ちょっと待って。」
突然、手を掴まれた。
「え…?蓮?」
訝しげな私と彼女は顔を合わせて、はっきりと言った。
「今日は、本当にありがとう。私、めちゃくちゃ嬉しかったんだから……。」
そう言って泣き出す蓮。
「ちょ、ちょっと、蓮、泣かないでよ……。大丈夫だから!」
私が泣かせたみたいになっちゃってるから!
その言葉をグッと喉の奥に押し込んで、彼女の肩を抱く。
「私……私……」
そう言った蓮が、言葉に詰まる。
「私…凛に何かお礼がしたい。」
……え?今なんて…?
その言葉を数秒かけてしっかり理解し、戸惑う。
「お礼…なんて…」
お礼って、何?
私は当然のことをしただけじゃないか。
そんな、利害関係を求めているような蓮に少しムッとした。
「私たち、友達でしょ?友達にお礼だのなんだの必要ないよ。私は当然のことをしただけ。この気持ちの良い関係のままいようよ。」
「……ごめん。」
突然泣き止み、しゅんとする蓮。
表情が、あまりにもわかりやすい。
言い過ぎたかな…と少し後悔した。
「じゃ、じゃあ、私…帰るね…!」
顔を上げて微笑んで、踵を返す彼女。
なんで、そんなに悲しそうな顔をするの。
私の心がごちゃごちゃになる。