パティシエ総長さんとコミュ障女子
2枚目の写真は、蓮が文具店で男性店員に羽交い締めにされている写真だった。
写真の中の青ざめた蓮がカメラ目線だ。
何か言いたげに開いた口がブレている。
万引き…現場?
「私…障害者なの。」
暫く経って呼吸の落ち着いた蓮が話した。
蓮を見ると、写真の中のように青ざめた顔をしている。
竜司くんは戻ってこない。
色々と察して二人にしてくれているのだろう。
だけど、ここは竜司くんの部屋だ。
ちょっと可哀想なことしちゃってるなぁ…
「これは…仕方がなくて。」
雑念だ、と竜司くんのことは頭から追い払う。
頭の中でデフォルメされた竜司くんが蹴飛ばされてどこかへ飛んでいった。
「どういうことか詳しく教えて。」
私は蓮に真剣に向き合った。
真剣に話を聞こうとしている私に安心したのか、そこからは蓮は割とスラスラと喋り始めた。
蓮は、緘黙症。
その中でも、場面緘黙症であり、家以外ではなぜか何もできなかった。
そんな話を始めた。
「私は、外では銅像のように動くことができなかった。ずっと、下を向いて黙りこくることしかできなかった。みんなと同じことができなかった。」
唇を噛み締めながらそう言う彼女の横顔は、辛そうだった。
「動きたくても、動けない。何もできない。体が、自分のものじゃないの。」
蓮は自分の体をさすりながら続けた。