パティシエ総長さんとコミュ障女子
「そんな障害があるから、いじめられた。何も抵抗のできない私はやりたい放題にされて、いじめの格好の的だったんだ。」
あの写真を苦い顔で見つめる蓮。
私は静かに相槌を打ちながら聞いた。
「人の何倍もストレスを感じやすかった。毎日毎日疲れて、疲れて、ただただ疲れた。家に帰ったら、泥のように眠っていた。」
あぁ、それは分かるかも。
私も人の何倍も疲れやすいし、心のキャパが小さい。
頷く私を見て、蓮の言葉に勢いがついた。
「ある時、私は…万引きをした。」
震える彼女は覚悟を決めたようにその先をしゃべる。
「どうしようもなかった。体が、勝手に動いて。レジで会計するのも私には難しいから。万引きのハードルより、レジで店員さんと話すハードルの方がはるかに高かったのよ。」
彼女の言葉には、自分を弁護しているような節がある。
「それで、万引きがバレて…そんなところをあいつらに見られた…!」
どこか悔しそうに蓮は言った。
私の中で決定的に何かが食い違った。
違和感があった。
蓮は、万引きをしたことを後悔していないの……?
「それから、もっとひどくいじめられた。学校に行くのが嫌で…でも、頑張って、私なりに耐えて…!それで、この高校に来て、必死の思いで高校デビューしたのに…。あいつらが同じ高校だったなんて…!」
またボロボロ泣き出す蓮。
「私は、障害者なのに…なんで過去のことを掘り返すの。なんで私を責めるの。なんで私をいじめるの。」
感情を爆発させて私にもたれかかってくる蓮。
でも、私はどうしても彼女の気持ちに寄り添えなかった。