パティシエ総長さんとコミュ障女子
私は蓮が落ち着くまでしばらく蓮にくっついていた。
突如、頭に重みがかかる。
「お前ら、頑張っていたんだな。」
見上げると、竜司くんの手が乗っていた。
「ちょ、子供扱いしないでよっ」
蓮が真っ先にその手を払いのけて逃げる。
「えぇ、そんなに俺が嫌いか…?」
突然元気になった蓮に驚いて呆れる竜司くん。
反応速度の鈍っていた私は逃げ遅れ、諦めて座りっぱなしにすることにした。
少し寂しそうな顔の竜司くんが口を開いた。
「生きているとさ、辛いことってたくさんあるよなぁ。わかるわかる。原田も凛ちゃんも、今生きていることは奇跡みたいなものだもんな。人生って死亡フラグの回避の連続だからさ。」
多分良いことを言っているのだろうが、まるで子供のように頭を撫でられているからか全く集中できない。
安心するような、懐かしいような、妙な気分だ。
「そういえば蓮の目的ってなんだっけ?」
いつのまにか話が脱線していたことを思い出して蓮に問いかける。
「あ!完全に忘れてたっ…瑠衣のことだぁ……。」
そう言って頭を抱える蓮。
「あのバカ…一体何やっているんだか…。」
私も頭を抱える。
突然、「距離を置こう」って一体何があったのだろう。
どこまで盗み聞きしていたのか、竜司くんも蓮と瑠衣の件は承知済みのようで、頷いている。
私がちゃんと言ったのに、蓮を守れって。
どうやって意味をはき違えたら蓮を避けるようになったのだろう。