パティシエ総長さんとコミュ障女子
蓮side
7月の夕暮れの空の下、私と瑠衣は竜司くんの店を後にした。
店を出る直前、凛に囁かれた。
「仲直りしなよ。」
その言葉に私は小さくグッドサインを出した。
「ねえ凛。私竜司くんに乗り換えようかなぁ〜」
冗談で言ってみた。
凛が驚いたような顔をする。
「え?なんで?」
「だって優しいじゃん。」
頭を撫でられた時、心の底から、彼が私を労っているんだということを感じた。
ケーキを食べた時もそうだ。
竜司くんのケーキは涙が出るほど優しい。
あの美しくて怖い顔に隠れているけど、彼はとんでもなく優しいのだ。
胸がときめかないと言えば嘘になる。
それほどまでに、竜司くんは魅力的だ。
「うーん、蓮はそれでいいの?」
「あははは、冗談!冗談だってば。竜司くんを奪ったりはしないよ。」
本気で心配そうに聞いてくる凛の肩を軽く叩いて笑う。
「ん…?奪う?竜司くんは私の所有物じゃないよ、変なの。」
不思議そうな顔の凛。
驚いた。凛はてっきり竜司くんが好きなのかと思ってた。
すごく仲良さげにしていたし。
少し想定外の反応を返された私は曖昧に微笑んだ。
凛はすごく綺麗な顔とスタイルだし、お似合いだと思うんだけどな。
自覚が無いのかな。
そんな言葉を胸の奥に押し込み、凛に手を振る。
「じゃあね。」
「うん、勉強の件、二人ともありがとうね。」
私は、凛と竜司に迷惑をかけてしまった。
そのお詫びというか、お礼というか、それに、友達のためならと思って、竜司くんに勉強を教えるのを受け付けた。
瑠衣もさんざんからかわれてヤケになったのか、英語を教えてやる、と言い出した。