パティシエ総長さんとコミュ障女子
凛は、理系科目が驚くほど得意だ。

特に数学の解法を考える発想力には呆れてしまうほどだ。

数学や科学に関しては天才と言ってもいいような子だと思う。

瑠衣は、耳が良いのか、語学系がやたら得意だ。

帰国子女でもなんでもないのにネイティブとスラスラと会話ができる。

これは永遠の謎だと思う。

私は…

私は、「答えの無い問題」が得意。

国語とか、作文とか、記述とか、そういう分野が得意だ。


見事なまでに得意分野の分かれた私たちは3人がかりで竜司くんの勉強に付き合うことにした。


と、語るのはいいけど、今とんでもなく気まずい。

隣には今日まともに会話できなかった瑠衣。

昼に散々殴られて痛む体を引きずって歩く私の速度に合わせてくれているのを感じる。

その小さなやさしさが、今はただ気まずい。

緊張とも疲れともとれない変な動悸が体に響く。


「あ、あのさ」


しばらく歩いていたが、沈黙に耐えかねた私が口を切った。


「クラスのグループチャット、見た!?」


語尾が大きくなってしまう。

声が裏返らなかったのが不幸中の幸いだ。

瑠衣も気まずかったのか、あからさまにほっとした顔をして答える。


「何の話?」

「っ…だから、私のことについてのメッセージ。」


どくん、どくん。

心臓が動く。

瑠衣が口を開くまでが随分と長く感じられた。
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