パティシエ総長さんとコミュ障女子
蓮は瑠衣の後ろ、ゆっこは慎吾の後ろ、私は壮助の後ろに乗り、ヘルメットを着用する。
ゆっこと私はそれなりに落ち着いているが、蓮は早くもパニックになり始めていた。
「ちょ、ちょっと待って高い!怖い!」
「しっかり捕まってりゃ大丈夫だ。逆に怖がってガチガチになっている方が危ねぇよ。」
「無茶言わないでよ!」
蓮と瑠衣が言い合っている。
この間の私と竜司くんを見ているような錯覚に陥り、複雑な気持ちになった。
「慎吾、重かったらごめんねぇ〜」
「少し重いくらいが安定していいですよ。」
慎吾とゆっこが慣れた様子でひと足先に出発する。
その次に壮助が続いた。
エンジンのかかる振動が体に伝わってきてあの時のようにテンションが上がってくる。
一気にスピードが上がると同時に夏の風が体を吹き抜け、気持ちがいい。
バイクの開放感は好きだ。
自然と笑顔になる。
「気持ちいい!!壮助、飛ばしていいよ」
「ま、マジすか…?いや、え、まって、今呼び捨てに…?」
インカムから壮助の声が聞こえてくる。
脳内でいつも呼び捨てていたから口から無意識に出てしまっていたことにやっと気づいた。
「あ、ごめんなさい…!嫌だった?もしかして敬語の方がいい?」
「全然!全然!嫌じゃないっす!!タメでいいので!!」
とんでもなくぎこちなくて必死な壮助の声におかしさが込み上げてきて、笑ってしまう。
バイクに乗っていると本当にテンションが上がる。
すごく自然に笑えるんだ。
前のように、バイクは工場の立ち並ぶ道を走りに走り、やがてあの双竜会の建物が見えてくる。
夏休みだからだろうか、停まっているバイクの量が前に来た時よりも圧倒的に多い。