パティシエ総長さんとコミュ障女子
「へぇ、いつの間に仲良くなったんだ。」
竜司くんが驚いたように私たちを見る。
確かに。
人見知りの私が壮助と普通に話せるのは、珍しい。
それに気づいてハッとする。
壮助の、一方的な真っ直ぐな私へのアタックがかなり有効だったことに驚いた。
いつも、私に話しかける人は、どこか裏があった。
蓮やゆっこ、そして今年に入ってから仲良くなったんだ人たちはまだ良い方だけど、壮助の裏表の無さは格別だった。
知らず知らずのうちに壮助を信用してしまっていたんだ。
うわぁ…これぞ人たらしだ。
催眠術のような効果に気づき、不本意ながらゾッとしてしまう。
壮助、末恐ろしい。
「まぁ、俺も伊達に凛さん狙っているわけじゃないっすからね。」
壮助が不敵に笑い、竜司くんに言い放った。
え、え、私を狙う…?
パワーワードに混乱する。
「え、もしかして私殺害予告された…!?」
隣に聞こえるか聞こえないくらいかの声で叫んでしまう。
今まで存在感の無かった瑠衣の肩が、笑いを堪えるように震えた。
「おー、恐ろしっ」
対する竜司くんも両手をあげておどける。
きちんと髪を固めているからか、やたら色っぽくて、全ての動作が絵になる。
突如、瑠衣が咳払いをした。
「はいはい、ツナちゃん挟んでそんな話しないの。で、竜司さんはどうだったの?定期の御神楽会への挨拶は。」
御神楽会への…挨拶?
竜司くんの顔が一瞬で曇った。
「どうもこうもねぇよ。相変わらず最悪な組織だ。」
竜司くんはチラリと私を見て言った。
「凛ちゃん…の前で言うべきじゃない気がするなぁ。俺の愚痴なんか聞いても楽しくねぇだろ?」
私は静かに首を振る。
別に楽しくはないだろうけど嫌じゃない。