パティシエ総長さんとコミュ障女子
いつのまにか、空が赤くなっていた。


「凛ちゃん!一緒に帰ろ。」


蓮ちゃんに誘われて、私は頷いた。

左隣にゆっこちゃん、右隣に蓮ちゃん。

不思議な感覚だ。

頬が緩んでしまう。



「凛ちゃんは、趣味とか特技とかあるの?私は勉強くらいしか取り柄ないんだけどさ」



蓮ちゃんが紅の空を見上げて言った。



「勉強くらいしか、とか言っちゃって〜。デブの私からしたら可愛くてスタイル良くて勉強できる蓮はすごいと思うけどなぁ…」



ゆっこちゃんがそう言ってお腹の肉を摘んだ。



「ゆっこはその体型が魅力じゃん!てか凛ちゃんはどうなのよ!ほっそい体しちゃって」



面食らった。



「…え?細い?私が?嘘だぁ。」


別に太っているわけではないと思うけど。
スタイルの良さで言ったら蓮ちゃんの方が断然上だ。


「それって嫌味〜?凛ちゃん自覚していないかもしれないけど可愛いんだから!」


そう言ってくれる蓮ちゃんに不思議な感覚がした。

「ブス」「きもい」「死ね」

いつだったか言われた言葉はずっと頭から離れていない。

なんで、今、正反対な言葉を言われているのだろう。

私は曖昧に微笑んだ。


「私は…特技とかあんまりないかなぁ。趣味だったら…うーん、甘いものを食べることかな。私甘党だから。」


そう言った私の横で、ゆっこちゃんが勢いよく私の方を見たのを感じた。


「え?ほんと!?甘いもの好きなの??私もなんだ!!いいよね!!砂糖っていいよね〜!!私何度苗字を『佐藤』にしたかったって思ったことか。あのね、砂糖は砂糖でもいろんな砂糖があってさ。例えば…」

「違う違う。凛ちゃんは甘みの原料の話をしているんじゃないのよ!」



すかさず蓮ちゃんのツッコミが入った。
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