パティシエ総長さんとコミュ障女子
まるで仲の良い友達のように、軽く言っていた。

でも、私はその質問に背筋が凍るような思いをした。

「パキる」というと、私が想像するのは「オーバードーズ」。

治安の悪いところに行くとよく耳にする俗語だ。

もしかして…という言葉を飲み込んだ。


「はい、もう大丈夫っすよ」


ぞわりとした。

相変わらず優しい笑みを浮かべているが、目の奥に、壊れた人格がのぞいていた。

いままで何度も見たような気がするイカれた人相だ。

近しいものを感じて、真夏なのに腕に鳥肌が立った。

この人は一度壊れている。

目を見て確信した。

一度壊れた人は、いくら修復したように見えても、ヒビは残っているのだ。

左腕に無性にかゆみを感じた。

私も……昔、壊れたことがある。

今まで、私のように壊れた人と関わって良かったことなんて一つもなかった。

一種の同族嫌悪に陥り、悠馬から視線をそらせて数歩後ずさる。

ゆっこの安心するふくよかな体の後ろに隠れたが、ゆっこは文句を言わなかった。

ゆっくり瞬きをして、恐る恐る悠馬をもう一度見た。


「あれ?」


優しい瞳に戻っている。

先ほどの暗い目が嘘のように消えていた。

私の視線に気づいたのか、悠馬は私と目を合わせてにっこりと微笑んだ。

咄嗟に視線を逸らせてしまった。

動悸が痛い。

全然分からない。

彼がどんな人なのか。

あれは見間違いだったのか?

あまり話したくない人だ。それだけは私でも分かった。


———
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