パティシエ総長さんとコミュ障女子
「竜司くんは凛のことが好きなのか!……私は、『1ヶ月以内に付き合う』に一票。」
「ちょっと待てちょっと待て?賭けの内容はなんだ?好きなのかどうか?それともいつ付き合うのか?それより賭けなのになんで投票形式なんだ?そして一体何を賭けるんだい?」
思わず質問攻めにしてしまう。
こいつ、頭はいいのに、アホだ。
「えー…蓮、つまんない。」
「俺のせい!?」
ぷくーっと頬を膨らませた蓮に理不尽に失望されて訳がわからなくなる。
「私は、『来年の1月に付き合い始める』に一票かな〜。あ、賭け金はジュース奢りでいいんじゃない〜?」
「え!?遅くない?私の予想と4ヶ月もずれてるじゃん。」
いやそれより賭け金しょぼっ!
ただ、裕子が蓮に乗ってあげているのは流石すぎる。
これが大人の余裕か…。
「瑠衣は〜?」
蓮に迫られて、別に考えたくもないことなのに深く考えてしまう。
「俺は…『付き合わない』に一票。」
「は?」
何?そのガチトーンの「は」。
「だってよぉ、あいつらそういう浮かれた関係とは別の関係になりそうじゃん。それにツナちゃんの方は別に竜司さんを恋愛的に見ていないと思うぞ。」
思ったより重みのある言葉になってしまったのか、蓮は少し考え込んでしまった。
ツナちゃんかぁ。
思わず振り向いてしまうほど美しい顔立ちをしていて、トロいかと思えば行動力があって、明るいかと思ったらすごくネガティブで、変な奴だ。
不意打ちとはいえあの竜司さんに重い一発をお見舞いしたらしいし、きっとかなり強いのだろう。
どこまでも不思議な奴だ、ツナちゃんは。
「そうだよねぇ…うーん…この話は終わりにしようか。」
そう言って蓮が笑う。