パティシエ総長さんとコミュ障女子


「はぁ、はぁ、はぁ。」


息を切らせて教室に入った瞬間、チャイムが鳴った。

クラスの視線が一気に私に向いて、ひゅっと喉が鳴る。

慣れない。

最近色々な人と話せるようになって錯覚していた。

そうだ、そういえば本来私はコミュ障なんだ。

自身のパーソナリティ障害のことを忘れかけていた。

気にしない、と言い聞かせて下を向いて席に向かう。


「間に合ったぁ……」


そう呟いて席に座ると、前の席の瑠衣が目で挨拶してくれた。

あ、そうだ忘れてた。

学校であまり話しかけないで欲しいって言ったの私だ。

笑みで挨拶を返して、汗を拭く。


「みんなおはよう」


息を整えていると、担任が教室に入ってくる。

これから体育館に移動して始業式だそう。

バラバラと教室を出て体育館に向かう。

蓮とゆっこと瑠衣が一緒にいるから、私は一人で歩いた。

広い体育館に入ると、やたら騒がしかった。

いかにも陽キャという外見の2、3年生たちが一カ所に群がっている。

ちょっと気になりはしたものの、別に年上の陽キャたちに興味があるわけでもなく、一年の列に並んだ。

キャッキャと笑う女子高生たちの甲高い声が混ざり合って耳に届き、とんでもなく不快だ。

うるさい先輩たちをこっそり睨みつけた。


「……御神楽……」


突然そんな言葉が聞こえてきた気がして、顔を上げる。

先輩の誰かが言ったような気がする。

耳を澄ますが、声が反響してしまう体育館ではそれ以上聞き取ることができなかった。

思わずキョロキョロしてしまい、恥ずかしくなってもう一度俯いた。

何やってんだろう私。

まるで竜司くんのことを考えていたみたいだ。

苦笑して、音をシャットアウトした。
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