パティシエ総長さんとコミュ障女子
瑠衣はと言うと、手に持っていたメロンパンがするりと抜け落ち、床に転がった。
「3秒ルール」と言いながら隣にいた男子が拾っていたが見なかったことにしよう。
「そ、総長!!」
開いた口が塞がらない瑠衣。
彼の頭の中がパニックになっていることは容易に想像できる。
当の御神楽竜司本人は、教室のドアに寄りかかり、とんでもない不機嫌オーラを発していた。
「こいつら、鬱陶しいから片付けたいんだけど。」
竜司くんが親指を立てて後ろを指した。
彼の後ろには、先輩と思われる人たちがたくさん群がっている。
「あんたが………目立つのが悪いんでしょうが……。」
プルプルと震える瑠衣。
私はただただ小さくなって、竜司くんに絡まれないことを願っていた。
「だいたい…なんであんたがここに居るんだ!!!」
ごもっともだ。もっと言ってやれ。
初めて瑠衣を応援したかもしれない。
「サプライズ!……ってところかな。」
竜司くんがニヤリと笑って言った。
あ、なんだ、それみんなに言うんだ。
あの時、どうしようもなくドキドキした自分が情けない。
「追い払えるわけないだろう!竜司さんが勝手に処理しろ!……ただ、転校早々退学になっても知らないっすよ。……あれ?俺のメロンパン…。」
やっとメロンパンが奪われたことに気づいた瑠衣はまさに、怒り心頭に発する、という様子だった。
「竜司さんのせいだ!俺のメロンパン返せ!!」
え……?怒りの沸点そこなの?
今までのやり取りで1番キレた瑠衣に拍子抜けする。