パティシエ総長さんとコミュ障女子
しかし、現実は無情だった。
バチッ……
そんな音が聞こえたかと思った。
「あっ……」
やばい、目が合った。
竜司くんと目が合ってしまった。
全身から汗が噴き出す感覚がする。
頼むから話しかけないでくださいっ…!
「…り……」
竜司くんの口が動いて、小さく言葉が発せられたような気がする。
しかし、彼はそれ以上何も言わずに、ちょっと寂しそうに微笑むと、私から目を逸らせた。
「じゃあな、瑠衣、原田、柳田。」
私はそこに含まれていなかった。
彼が教室から去っていくにつれて戻ってくるざわめき。
止まってしまった会話を再開させた人たちは、まるで時がまた動き始めたかのようだった。
胸がチクリと痛む。
なんだろう……、他人のふりをして竜司くんに気を遣わせてしまった罪悪感?
そっと胸を押さえる。
「びっくり…したぁ……」
蓮とゆっこは放心したように椅子に深く腰掛ける。
「私、疲れた。」
気持ちの整理ができず、私はただ一言そう言って、机に突っ伏してしまった。
自分の気持ちから、目を逸せてしまった。
罪悪感じゃない、本当は。
本当は、寂しかったんだ。竜司くんと話したかったんだ。
なんて身勝手なんだ、竜司くんは私に気を遣って他人のふりをしてくれた。
竜司くんを振り回しているのは、私なんだ。
私のせいだ、全部私のせいなんだ。
私もみんなとおんなじ、普通の子だったら……。