パティシエ総長さんとコミュ障女子


「竜司…くん!?」


心臓がドクンと跳ねた。

日陰には、先客がいた。

暑さを和らげるためか、髪を結い、ポロシャツの第一ボタンが開いている。

開いた胸元から見える鎖骨が美しい。

座っている彼は、上目遣いに私を見上げていた。

……会いたかった。

1番に出てきた感情がそれだった。

そして、自分自身に戸惑う。

どこまでも竜司くんに迷惑をかけてしまう。

罪悪感で竜司くんを直視できなかった。


「よぉ凛ちゃん、あんたもサボり?」


私の心情をよそに、呑気にそう聞いてくる彼。

あ…れ?

気まずくない…かも?


「ううん、サボりじゃないよ、暇すぎて。まさか会うとは思っていなかった。」


微笑んでそう答える。

竜司くんがおいでおいでと手招きをする。

近づくと、彼は自身の右隣の床を手で示した。

せっかくだから、と竜司くんの右隣に腰を下ろす。

少し離れて座ると、竜司くんが私との距離を詰めてきた。

左肩に竜司くんの右肩が若干触れた。


「あの……ごめんね…、いやありがとう、かな?他人のふり……」

「あぁ、あれね、いいよいいよ。凛ちゃんの状態が最優先だしね。」


言いづらいことを勇気を振り絞って言葉にすると、あまりにもあっけなく片付けられてしまった。

横を見ると、微笑んだ竜司くんの綺麗な横顔があるだけだった。


「凛ちゃんが望むならいくらでも他人のフリするし、避けられてもいいよ。……ちょっとグッサリくるのは事実だけど…。」


かっこいいこと言っているのに、最後の付け足しが少々余計で竜司くんらしい。

思わず笑ってしまった。
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