パティシエ総長さんとコミュ障女子
「まぁいいだろ。俺が総長だってバレたところで別に損は無い。」
「緩いな!」
これには笑ってしまった。
「確かに竜司くんが総長だってバレようがバレまいがあんまり変わらないだろうな…。イケメンだし、どうせストーキングされるでしょ。」
そう言うと、竜司くんがハッとした顔をした。
「イケ……メン……か。世辞でも嬉しいもんだな。」
ちょっと照れたように笑う竜司くんが可愛い。
「世辞じゃないよ。本当に思っているもん。」
「ありがとよ…。あれ、俺初めて凛ちゃんに外見褒められたかも。」
「え、あれ?そうだっけ?」
「あぁ。」
また、だ。
イケメン、なんて彼にはたくさん言ったような気がしていた。
おかしいな…。
竜司くんに対してはデジャヴも多いし。
ほんの少しの疑問を感じたものの、時期に忘れてしまうだろう。
気のせいだと言い聞かせて会話を続ける。
時間がすごい速さで過ぎていく。
残暑の厳しい9月。
しかし、暑さも気にならないほどだった。
他愛もない話で笑い合うのがこんなに楽しいことだなんて、半年前の私には分からないだろう。
盛り上がった会話はいつしか途切れ途切れになり………。
「…………っ!…凛!凛ってば!」
体を揺すられて目を開ける。
腰が痛い。
目の前には心配そうに私を見る蓮が居た。
あれ……?私、今、何して…?
回らない頭で考える。
竜司くんと屋上で話していて…、それで…?それで、どうしたっけ?
突如、思考の回線が一気に繋がった。理解した。
「嘘!?私寝てた…!?」
立ち上がろうとするが、足に力が入らない。