パティシエ総長さんとコミュ障女子
二人と別れて十分ほど。

大きな門の灯りが私の影をたくさん作っている。


「帰りました」


施設のドアを開けると、夕食のいい香りがした。


「おかえり、凛姉!」


もう入浴も夕食も済ませたのであろう、パジャマを着た未就学の小さな子供たちが私を出迎えた。


「ただいま」


彼らは私と同じようになんらかの理由で親と過ごせなくなった子供たちだ。

私も、中学生のころ、親元を離れてここに来ることになった。


「お帰りなさい、凛ちゃん」


この施設の職員のおばさん、小宮さんが現れて、名簿にチェックをつけた。

私の家はこの児童養護施設、「あさがお園」だ。

私は三年間ほど親に会っていない。

今の私にとってはここが家であり、彼らが家族だ。


「夕食の時間だから部屋に荷物置いて食堂に来るのよ!」


これから幼児たちを寝かしつけるのだろうか。

子供達の背中を押しながら小宮さんは去っていった。


私は階段を登り、3階に向かう。

基本あさがお園は中学生から1人部屋を与えられる。

部屋には風呂は無いが、トイレや洗面所はある。

3階の1番奥の自分の部屋に着いてドアを開けるとそこは自分の空間だ。

バッグを椅子に置き、制服を脱ぎ捨ててTシャツと短パンになる。

さっと水を出して手を洗い、部屋を出て、食堂へ向かう。

< 21 / 181 >

この作品をシェア

pagetop