パティシエ総長さんとコミュ障女子


「あ…暑い!!」


私はひとり愚痴をこぼしながら日の長くなった通学路を歩いている。

今日は部活で蓮ちゃんとゆっこちゃんはいない。

蓮ちゃんは百人一首部、ゆっこちゃんは女子相撲部だ。

ゆっこちゃんはよく言っていた。

「女子でもきっといつかは大相撲の土俵に立てる!」

目を輝かせてそう言うゆっこちゃんはとても輝いている。

私は、無所属だ。

そもそも部活に入れるだけのコミュ力が無い。

それに、私が得意なものも思いつかない。

多少体が強いが、何か運動をしたい、と言うほどでもない。

今の時期は中間考査の勉強くらいしかやることがない。

暇だ。

あぁ、なんかやる気が出ない。

早く涼しいところに行きたい。


私は久しぶりに近道をした。

あの、ケーキ屋のある道だ。


暑い…暑い……

あぁ、面倒くさい。全てが面倒くさい。


鬱だった頃の無気力な状態が暑さによって再現されているようだ。


だるい、面倒くさい、歩きたくない、何もかもが無気力だ。

疲れた、しんどい、ふらつく…。


え?ふらつく…?

あれ、あれれ、視界が…歪む……


あ、これヤバいやつかも…。

「熱中症」

そんな言葉が頭の中に浮かぶ。


やばい、これ、完全に熱中症だ。


足取りがふらつき、思考回路が曖昧になる。

倒れているんだか歩いているんだか分からなくなり…

私は助けを求めて、近くの店のドアを開いた。
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