パティシエ総長さんとコミュ障女子
「……別に…無理はしていなかったと思います。」
そう言って目を逸らす私。
不思議だ。やっぱり私は出会って日の浅い彼と普通に目を合わせることができる。
「そう。なら良いけどさ。」
そう言って安心したようにちょっと笑った彼はいつもの怖い総長の顔とは別の顔だった。
「店は、良いんですか?」
ふと気になって聞いてみた。
今日も営業日のはずだ。
店から離れてこんなところにいて大丈夫なのだろうか。
「うーん、それがさぁ。なんかいてもいなくても良いって言うか……。」
歯切れの悪い返事が返ってくる。
彼はバツが悪そうに横を向き、ぼそぼそとつぶやいた。
「俺が挨拶するとみんな逃げるんだよ。俺の接客、何か間違っているのかな。まぁ、腹パンちゃんを泣かせちゃうくらいだから間違ってはいるんだろうけど。最初の方は客も来ていたんだけどもうすっかり来てくれなくなっちゃって。」
その言葉に、思わず笑ってしまった。
「当たり前ですよ。みんなあなたのあんな挨拶聞いたら逃げ出しますよ。あと純粋に顔が怖いです。どういう成り行きでケーキ屋を運営していらっしゃるのだか知りませんがその無愛想な強面、なんとかならないのですか。総長オーラ出しまくりですよ。まずは自制することを学ばなきゃいけませんね。」
途中から少し言いすぎているような気もするが、まぁ、良いだろう。
御神楽は、心外だと言わんばかりの顔をした。
「顔!?声はなんとかなるにしても顔はどうしようもないだろ…。じゃあどうしろって言うんだ。ていうか腹パンちゃん、そんなに喋れたんだ。」