パティシエ総長さんとコミュ障女子

私は元々饒舌な方だから、これくらい喋るのは当たり前だ。

…ただ、なぜほぼ初対面の御神楽にこれだけ話せるのか、ということは私でも謎だ。


「私だって喋りますよ。御神楽くんは店の顔になるべきではありません。それより、総長だってこと、バレて良いんですか?私は一瞬で気づきましたけど。」

「はぁ?俺が店を運営しているのに店に立っちゃいけないのかよ?それに俺、総長だってことバレてんのかよ!?俺いつもマスクしているしこんな小洒落た服着ねぇよ……。腹パンちゃんの観察眼が鋭いだけじゃね?」

「双竜会にほとんど興味のない私でも気づいたんですよ。今後どれだけの人が気づくと思いますか?早く手を打たないとここでやっていけなくなりますよ。ネットの時代は怖いですよー。御神楽くんがここにいることがバレたらどうなるのでしょうか。」

「ぐっ……。口がお達者なことで。」


悔しそうに口をつぐむ御神楽。

あまりにも口論に弱すぎて可哀想になってくる。


「どうするんですか。御神楽くんのケーキはすごく美味しいです。それだけは私が保証します。」


その言葉に、彼の顔がパーッと明るくなった。
うわぁ、眩しい。

いつもそんな顔をしていれば良いのに。

なんて考えてハッとした。

一瞬でも彼の顔に見惚れてしまったことがなぜか少し悔しくて、泣くほど美味しかったということは言わないことにした。
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