パティシエ総長さんとコミュ障女子


「御神楽くんのケーキ店がこのまま潰れるのはなんか……ちょっと悔しいっていうか。」


御神楽の表情が一瞬で戻った。


「潰れるなんて、誰が言ったんだ!」

「私が言いました。」

「はいすみませんでした。」


御神楽の足掻きを容赦なく叩きつけ、彼はしゅんとなって黙った。

ほんと、いつもこれくらい感情表現が豊かだったら良いのに。

そう考えて、あぁ、自分も人のこと言えないなと思った。

感情を出さないのは私も同じだ。

いつも仏頂面で、つまらなそうな顔なのは、私も同じだ。

蓮ちゃんも、「怖そうな印象」とはっきり言った。

御神楽も、私と同じなのかもしれないな…。


「だから、御神楽くんはバイトを雇うべきです。それも信用のおける人で、なおかつ人当たりのいい人がいいと思います。店にはその人に立ってもらってください。そうですね……女性だとベストなのですが。」


御神楽の顔が歪んだ。


「……俺に信用のおける人当たりのいい女の友達が居ると思うか…?」

「え?」


逆に、いないのだろうか。

私の主観も入ってしまうけど、御神楽はいつも女の子たちに囲まれているイメージがあった。

イケメンで、ここらの地域を統治する総長なら、女の十や二十集まってくるのは当然じゃあないか。

その中から選べば良いのだから、簡単なのでは。
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