パティシエ総長さんとコミュ障女子
「わっ…!え?な、なんかごめん!」
必死に断る私に、御神楽は面食らって謝ってきた。
唇を噛み締める。
私、あんなに偉そうなこと言っといて、肝心なところで役に立てない。
弱い。すごく弱い。
なんでも病気のせいにして生活している。
本当は逃げている…のに。
「腹パンちゃんが嫌なら無理強いはしないよ。ごめん。……なんとかして人は探す。アイデアを出してくれただけでも嬉しいよ。」
そう言って彼はにこりと笑った。
その笑顔に胸が締め付けられるような変な感覚がした。
「っ…、ちょっと、まってください…。」
私は立ちあがろうとする彼の服の裾を掴んだ。
私が通っている病院の主治医さんが言っていた。
『ゆっくりで良いから、少しずつ、苦手なことも出来るようになっていこう。』
私は、まだ何も前進していない。
少しくらい、頑張らなきゃ。
決めたんだ。あの時。絶対に克服するって。
歪められてしまった私の人生を、もう一度、普通の人と同じようにしたい。
それで、過去のことは綺麗さっぱり忘れようって。
「バイト…します。」
御神楽は驚いた表情をした。
「良いのか…?腹パンちゃん。」
私は微笑んで伝えた。
「私、克服しなくちゃいけないことがあるんです。私の未来のためにも、過去のためにも。コミュ障とか病気とか言ってられません。」