パティシエ総長さんとコミュ障女子
彼は私の頭を軽く叩いた。
「マジ、助かる。よろしくな、腹パンちゃん。」
差し出された手を握り返す。
大きな彼の手は、硬くて、温かかった。
「こちらこそ。あと、私の名前は腹パンじゃなくて、凛です。宮川凛。あなたのアイデア源として都合よく使ってください。」
私はできるだけ表情を作るように頑張って、微笑んだ。
「おい、お前自分から都合のいい女に成り下がろうとしてんじゃねえよ…バカなのか?あと俺は竜司な。俺、御神楽って呼ばれるの好きじゃないんだ。」
わぁ。私別に都合のいい女になろうとなんてしていないんだけどなぁ。
「分かりました竜司くん。」
彼は少し眉を下げた。
「真顔で敬語使われたらちょっと怖いな…。タメでいいぞ?」
真顔…
やっぱり私は表情を作るのが苦手だ。
いつかきっと自然に笑えるようになる。
そう信じているのは変わっていないけど。
「うん。了解!竜司くん!」
彼は微笑んだ。
「無理はするなよ。」