パティシエ総長さんとコミュ障女子
「あんた、トロい。俺トロい女、嫌い。」
カチンと来た。
頭のどこかでなにか変なスイッチが入った。
バン!!!
私はテーブルを叩いて立ち上がる。
「宮川凛!!高一!!ここで雇われています!!喋るのが“すごく”苦手です!!!よろしく!」
全員がポカーンという顔をしている。
「あははははは」
突如笑い声が響いた。
瑠衣だった。
「え?なにそれ俺への当てつけ?あんた普通に喋れるじゃん、可愛こぶってんじゃねーよ!どうせそのぶりっ子で竜司さんに取り入ったんだろ!」
意味のわからない悪口に晒された私は、売り言葉に買い言葉、というか、どうも腹が立つ。
「……よせ!!!」
私を睨む瑠衣を、竜司くんが粛清した。
「凛ちゃんのこと何も知らないくせにバカみたいなこと言うな。」
眼光の鋭さで言ったら、竜司くんの方が格段に上だ。
竜司くんに睨まれた瑠衣は、悔しそうに黙った。
私は、熱くなる腹の底の感情を抑えて、席についた。
「……まぁ、俺も凛ちゃんのことはほとんど何も知らないんだけどさ。」
そう言って笑う竜司くん。
一気にその場の空気が和んだ。
「へぇ、あんたいい事言うじゃん。」
蓮ちゃんが感心したように竜司くんを見る。
私も、まさか竜司くんが庇ってくれるとは思わなかったから少々驚いた。