パティシエ総長さんとコミュ障女子
「で?なんの話だっけ?」
あまりにも自然に会話に入る蓮ちゃん。
さすがコミュ力の塊。
「つーかあんたら双竜会なんだって?」
すでに総長に会っているからだろうか。
瑠衣や慎吾が双竜界のメンバーだと知ってもあまり衝撃は無かった。
「あぁ。コイツらちょっと曲者だけど腕が立つからな。大事なメンバーだよ。」
竜司くんがいつもの調子に戻って答えた。
「で、なんで竜司くんはこんなところでケーキ屋なんて営んでいるの?」
すでに会話は蓮ちゃんのペースになっていて、誰もその流れに抗おうとはしなかった。
「さーな。反抗期ってヤツよ。」
面倒くさそうに竜司くんはそう言って、頭の後ろで腕を組んだ。
その手で、束ねた髪の毛を解き、サラサラの薄茶の髪が首元から鎖骨にかけて落ちた。
ウルフカットだったんだ。
私はどうも場違いのことを考えていた。
「親父に反抗したくてさ。はっきり言って俺は親父が嫌いだからな。御神楽会のやり方がキモすぎてやってらんねぇよ。」
竜司くんが遠くを見る目をしている。
「ま、双竜界っつーのは御神楽会に対抗するためにあると言っても過言じゃねーからな。」
瑠衣が後を継いで言った。
「竜司さんは御神楽会のやり方に反抗してグレちまったんだ。で、ヤクザからケーキ屋に転職さ。ウケるよな。」
なるほど。
竜司くんはお父さん…つまり御神楽会の会長に反抗してヤクザと反対のことをやり続けた結果、ケーキ屋に辿り着いた、ということか。