パティシエ総長さんとコミュ障女子
「食え。」
戻ってきたら竜司くんは無愛想にそう言うと、ケーキを四つ差し出した。
瑠衣、慎吾、蓮ちゃん、ゆっこちゃんの分だろう。
「わぁっ……!!」
最初に瞳を輝かせて喜んだのは、ゆっこちゃんだ。
甘党の彼女とスイーツは切っても切り離せないもの。
「いただきます!!!
ゆっこちゃんは丁寧に手を合わせ、一口目を口に運んだ。
全員の視線がゆっこちゃんに集まる。
「お、お、お……美味しいっ……!!」
ゆっこちゃんは一口目で、卒倒しそうなくらい顔を綻ばせた。
頬に手を当て、眉を下げ、本当に美味しそうな表情。
「すげー美味しそうに食うじゃん……」
竜司が照れたように呟いた。
食欲がそそられたのか、蓮ちゃん、瑠衣、慎吾も食べ始める。
「おいしっ……!」
「………うま。」
「え、これ本当に竜司先輩が作ったんですか?」
蓮ちゃんは素直に、瑠衣は少し悔しそうに、慎吾はまだ疑ったまま、各々のケーキを食べた。
「言ったろ?俺は十分ケーキ屋を営むだけの腕はあるんだよ。」
ちょっと自慢げに言う竜司くんの言葉は、残念ながら私以外誰も聞いていないようだった。
「っ……おいしい……」
突如、蓮ちゃんがポロリと涙をこぼした。
「あ…あれ?なんで涙が出るんだろ。美味しい、すごく美味しいよ。」
当の本人が一番困惑している。