パティシエ総長さんとコミュ障女子

あぁ、こういうところか。

妙に納得できた。

俺が凛ちゃんを嫌だと思わない理由。面倒臭いと思わない理由。

凛ちゃんは、人との距離感が絶妙なんだ。

引くべきところでは空気を読んで、一瞬で引いてくれる。

今まですり寄ってきた女性たちは、ドロドロの煩悩や下心が丸見えだった。

俺の権力と身体、顔目当ての、女性ばっかりだった。

凛ちゃんといると安心できるのは、凛ちゃんがそんな女性たちとは違うから。


「生クリーム、味見する?」


問いかけると、勢いよく首を上下に振る凛ちゃん。

俺はスプーンか何か、生クリームを掬うものを持ってこようとボウルを置いた。

その瞬間。


ぱく。


「え…?」


右を向くと、凛ちゃんが、俺の指を咥えていた。


「んっ??え??えぇっ…!?」


俺は大困惑。

凛ちゃんが俺の指を咥えている。その絵面が理解できなくて、脳内がショートする。

え、何これ可愛い。


…………じゃないだろ!!!



「り、凛ちゃん?何やってんだ??」

「付いていた生クリーム、ごちそうさま!」


うっ……!

て、天然なのか…?これは。

いやいやいやいや、天然、なんて2文字で片付けていいものなのか!?

か、可愛いけど…

少々常識破りじゃないか…?

ペロリと舌を出す凛ちゃんに困惑する俺。

よく分からない絵面だ、本当に。
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