パティシエ総長さんとコミュ障女子
「あ、あのね?凛ちゃん。俺、ちゃんとスプーン持ってこようと思っていたんだけど…。」
「えっ!?ご、ごめん!!!」
説明すると、ちゃんと謝る凛ちゃん。
マジで?あれは、本当にナチュラルにやっていたのか?
腹の底からおかしさが込み上げてきた。
「あははははっ!!何やってんの凛ちゃん!」
「ちょっ、ごめんなさいって!笑わないでっ!笑うな!」
「あはははははは!面白くって、ははははっっ!」
顔を赤くして俺の背中を叩く凛ちゃん。
あー、俺、最近よく笑っている気がする。
「まぁ、凛ちゃんに舐めてもらった手袋、捨てたくないけど、衛生的にこのままケーキ作るのは良くないから捨てなきゃだな…。」
「す、捨てて!そんなの早く捨てて記憶から抹消して!!」
「コレクションにしようかなぁ〜」
「いいから捨てろ!」
なぜかちょっと残念な気持ちを抱えながら、俺は手につけていたゴムの使い捨て手袋を捨てた。
ガコン、と音を立ててゴミ箱の蓋が閉じた。
あー笑った笑った。
本当に面白くて、変な子だ。
「あぁ…雨が止まないな…。」
凛ちゃんがそう呟いて、窓から外を見た。
雨は止むどころか激しさを増している。
時間もすでに7時を過ぎ、外はいよいよ暗くなっている。
ほぼ真っ暗だ。
「ねぇ、竜司くん…。」
「何?」
凛ちゃんが横から話しかけてくる。
俺は作業を続けながら聞くことにした。