パティシエ総長さんとコミュ障女子

凛ちゃんが俺から顔を背け、外を見る。

外は、闇だ。

夜の帷が降りている。

あぁ、そういうことか。

……素直に言えばいいのに。

ああ、多分色々と凛ちゃんのプライドとか、あるのだろう。それは俺でも理解できるはず。


俺は、玄関まで行って、大きな傘を取る。

後ろからトコトコと凛ちゃんがついてくるのを感じた。


「ん、おいで。」


俺は、外に出て、傘を開いた。


「えっ…」

「いいから、来いって。」


一瞬困惑した凛ちゃんだったが、玄関からパッと外に出て、俺の隣に、傘の下に入った。


「送るよ。」

「そんな、悪いよ。」

「良いって。」

「………うん。」


凛ちゃんの腕をつかみ、傘の内側に引き寄せる。

彼女の、アームカバーをつけた左腕は、細かった。


「怖くないだろ。俺がいるよ。」

「………うん、ありがと。」


さっきの話で感じ取った。

多分、彼女の1番の心の傷は、いじめじゃない。

もちろん、いじめのことは辛そうだったが、親の話をする時が1番辛そうだった。

きっと、いじめられるより前に何かがあったんだ。

暗闇の話も、はぐらかしていたが、おそらくあさがお園に行く前に何かがあったのだろう。

それを俺に言わないということは、俺はそこまで信用されていないということだ。

でも、それでいい。凛ちゃんが無理する必要なんか無い。

いつか、本当に信用できる、それこそ一生添い遂げられるような人を見つけられたら、言えばいい。言わなくてもいい。
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