パティシエ総長さんとコミュ障女子
双竜会


「きゃああ、凛ちゃん、今日の髪型も可愛いわねーー!!」

「ケーキもう一つ買っていっちゃおうかしらっ!!」

「ファンサちょうだーい!」


7月半ば。

竜司くんの店に来てから1ヶ月半が経った。

休日は一日中、平日は放課後、といった具合にバイトをして、もうだいぶ慣れてきた。

竜司くん自身も学校には行っているから、このケーキ屋の平日の営業時間は放課後だけという少し特殊な店だ。

で、今はなぜかこの状態。

私は、おばさんたちに異様にモテるらしい……。

キャッキャと騒ぐ近所のおばさんたちに囲まれて私は笑顔を浮かべている。


「いつもありがとう!今日もケーキ買ってくれるの?嬉しい!!」

「きゃあーー!」

「凛ちゃん可愛いねぇ!」


しつこく店に来るおばさんたちに、いつのまにか私も心を許していて、仲良くなってしまっている。

おばさんたちには、人生において生きる糧など、深い話をしてもらっているから、楽しい。

すでに店でスケッチブックを使うことはだいぶ少なくなってきていた。


「よぉ、凛ちゃん。よくやってるなぁ。」

「ばっ…!竜司くんは出てきちゃダメ!」


後ろから声がして、慌てて振り返る。

しかし、おばさんたちの方から悲鳴が聞こえることは無かった。


「はぁぁぁ、水も滴るいい男〜」


うっ……

そうだった。竜司くんはすでにおばさん達に懐かれ始めていたんだった……。


「あ、田中のおばさんじゃないすか。今日はチーズケーキがおすすめっすよ?買っていきません?」
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