パティシエ総長さんとコミュ障女子
「明日が楽しみだね〜」
ゆっこがそう言うと、蓮はますます顔を赤らめてゆっこを叩いた。
明日?明日瑠衣と会うのかな…?
そんな微笑ましい話をしながら私たちは別れた。
別れた地点からあさがお園までの道のりを歩きながら、私は空を飛ぶカラスを見た。
夕暮れの空に美しい。
最近、久しぶりに生きていることが楽しい。
友達ができて、バイトをして。
「普通の高校生」「普通の青春」に近づいてきている気がする。
素直に嬉しい。
まぁ双竜会の総長と知り合いとか普通じゃないかもしれないけど…。
毎日、明日が来るのが楽しみ。
「明日が来なければいい」「私は明日を迎えられるだろうか」そんなことを思っていた時期が私にもあった。
だから、余計、この「明日が楽しみ」ということがいかに有難いかが分かる。
「明日も学校か……。楽しみだな…」
この気持ちを味わいたくて、呟いてみる。
鬱の時は、今生きているのか死んでいるのかも分からなかった。
でも、今は「ああ生きている」って分かる。
不思議な感覚だ。
私は大きく深呼吸し、あさがお園の扉を開ける。
「おかえり凛姉!」
幼児たちの声を聞きながら、私はいつもの日常を過ごす。
ただ、それは前の日常とは違う日常だった。