パティシエ総長さんとコミュ障女子
気まずさに私は下を向いて黙った。
私に声が届かないよう、みんな気を遣って小さな声で言っているのだろう。
だけど、私は「聞く力」が強い。
だから、全部筒抜けなんですっ!!
「もう二度と遅れるなよ。そして、この先も問題を起こすんじゃない。次は停学じゃ済まないぞ。」
担任がそう言って、朝のホームルームは終わった。
もう嫌だ……
目立ちたくないのに……
私が机に突っ伏して絶望している中、瑠衣は私を放置して蓮とゆっこの方に行ってしまった。
「よぉ!蓮!裕子!」
「る、瑠衣くん、おはよ!」
「おはよ〜」
そして、瑠衣の周りに一斉に人が集まる気配がした。
「南くんって、あれだよね?双竜会の幹部だよね!?」
「え、本物!?」
「近くで見るとめっちゃカッコいい〜〜!」
うわぁ、双竜会って、思いの外幹部とかも有名なんだ。
それはともかく、私からは注意が逸れたようで、嬉しい。
こうやって伏せていると、周りを見なくても音で何が起きているか大体判断できる。
やっぱり変な能力だなぁ、これ。
「え?蓮と知り合いなの?なんで?」
わっ、また不穏な空気。
暫くは瑠衣と蓮とゆっこと距離を取らなきゃいけないかもなぁ…。
その日、私は心休まらない1日を過ごし、疲れ切って下校することになった。