パティシエ総長さんとコミュ障女子

目を開けると、時計は6時を指していた。

飛び起きた。あれから、かれこれ2時間ほど寝たり起きたりを繰り返していた。

夕食の時間だ。

私は慌てて部屋着に着替えて、下へ降りた。

廊下には子供達がたむろしていた。

私と同年代の人たちもいる。

近づくと、その中心には瑠衣がいた。


「じゃ、そろそろ帰るよ。」


瑠衣のその言葉に、みんな口々に答える。


「いつでも来いよー」

「瑠衣兄ちゃん、また会おう!」

「遊んでくれてありがとう。」

「辛くなったら連絡しろよ!」


瑠衣が笑って手を上げる。

小宮さんが私を見つけて言った。


「凛ちゃん、瑠衣くんを門まで送りなさい。」


うわぁ、こんなこと言っちゃいけないけど……めんどくさ…。


「はーい…」


瑠衣に目配せして、靴を履く。

瑠衣はおとなしく着いてきた。

玄関を出ると、夏の夕暮れの静寂が私たちを包む。


「ほんと奇遇。瑠衣と同じ施設だなんて。」


私がそう言うが、瑠衣は答えない。


「俺、親に捨てられたんだよね。」


…………え?

あまりにもサラッと言った瑠衣に驚く。


「ま。今更隠す必要もないしさ。」


なぜかピースサインをして笑う瑠衣。

なんて反応したら良いのか、分からない。


「いわゆる育児放棄ってやつよ。母が俺を放置して毎晩男連れ込んでてさ。何を思ったんだか、母は邪魔な俺を毎晩外に放り出していた。」


夕暮れの光が瑠衣の髪の毛を照らして、スリットから繊細な光が漏れている。
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