パティシエ総長さんとコミュ障女子
「うーん…俺はね、自分で不良だって名乗っているわけじゃないんだよ。双竜会も不良グループって言われているけど、ヤクザの息子が運営しているっていうだけで別に『不良』になりたかったわけじゃないんだよなぁ。」
私の意味不明な質問にも、きちんと律儀に答えてくれる竜司くん。
「え、じゃあ、双竜会の人に出会ったら殺される、とか裏社会を牛耳っている、っていう情報は嘘なの…?」
「おいおい、人をそんな通り魔みたいに言うなよ…!?」
顔を顰める竜司くん。
あれ…?じゃあ、あの、クラス内で囁かれていた情報は誰かが流したデマなのかな?
「ふーん…そっかぁ。じゃあさ。」
私は竜司くんの顔を両手で挟み、自分の顔を近づけた。
「え、何!?ちょ、凛ちゃん!怖い怖い!」
至近距離から竜司くんの顔を見つめる。
「やっぱり、眉毛ある!!」
「はぁ!?」
私のイメージだけど、不良=ヤンキーで、ヤンキーと言ったら眉毛が無い、というのが常識だった。
「やっぱり竜司くんは不良じゃないや。」
「いや、いつの時代の話しているんだよ!!今時律儀に眉毛剃るヤンキーなんていねぇよ!」
全力で突っ込まれる。
あれ…?もしかしてこれ時代遅れなのかな。
それにしても竜司くん、悔しいほどに肌が綺麗だな。
女子の私よりも綺麗かもしれない。
「近い近い!凛ちゃん!一旦離れようか…?」
竜司くんに押し戻され、椅子にドスンと尻餅をつく。
ちょっと怒ったように顔の赤い竜司くんが、私を嗜めるように私の頭をポンポンと優しく叩いた。
「いくら天然でも無闇に男に近づくんじゃないぞ」
「あはは、お母さんみたい」
「お前なぁ…!危機感をどこに置いてきたんだよ…。」
「えー…まさか、そこら辺の男の人にいきなりやったりはしないよ〜。」
「そういうことじゃねぇ!」
キョトンとしてしまう私。
ちょっと会話が噛み合っていないかもしれない。
そんな私を見て、竜司くんはため息をついた。
その日は、竜司くんはもう私のその行動を咎めたりしなかった。