パティシエ総長さんとコミュ障女子
「竜司くんおはよう〜。」
翌日の土曜日、私は朝から竜司くんの店に来ていた。
いつもの制服とは違い、黒の緩いシャツにグレー地に青チェックのプリーツスカートにスニーカーという、動きやすくて、自分なりに精一杯オシャレした服装だ。
髪はポニーテールにしてみたけど、蓮のようには似合わなかった気がする。
「よ、凛ちゃん。早いね。」
竜司くんが黒いショルダーバッグを身につけて出てきた。
げっ…スタイルが良すぎる。
あまり隣にいたくない人種だ…。
スキニー気味なジーンズに紺のシャツという簡素な服装なのに、驚くほど着こなしている。
恐ろしい。
何頭身あるのか測ってみたいくらいだ。
「凛ちゃん可愛いね〜。それに細い。前も言ったけど、ちゃんと食べてる?」
「食べてるよ!」
朝から絶好調な竜司くん。
「ポニテにしたんだ。俺と同じだ。」
竜司くんの頭の後ろでも、ウルフの髪が緩く纏められていて、ふわふわと揺れている。
こいつ…ヘアピンなんて、私でも上手く使いこなせないものを使いやがって…
どこまでもルックスが完璧人間だ…。
「はい。これ付けてね。」
竜司くんが何かをポンと投げる。
慌ててキャッチすると、ヘルメットだと分かった。
ヘルメット?ま、まさか……。
不思議な顔をしている私に気づいたのだろう。竜司くんがニヤリと笑った。
「あれ?言ってなかったっけ?今日はバイクで行くんだよ。」
「バ、バイク!?私、乗ったことないよ!」