パティシエ総長さんとコミュ障女子
「はぁはぁはぁ…」
「慣れてきたか?」
「おかげさまで…。」
20分ほど走行して、やっとコツを掴み出した。
バイクは街を抜けて、大きな工場が建つ地帯の中の道を走っている。
周りは工場だらけで、人は少ない。
もう、本当に怖かった。安全運転って、何よ!!
でも竜司くんの有無を言わさない運転のおかげで、私は早いうちからバイクに適応することができた。
「やっぱり凛ちゃんは体幹が強いな。こんなに早く慣れるなんて結構すごいぞ。」
「もうヘトヘトだよ。」
やっと景色を見る余裕も出てきた。
慣れてくると、風が気持ちいい。
タンデムの座席にも上手く座れるようになってきて、竜司くんにしがみつかなくても大丈夫になってきた。
「うわぁ、すごいね、バイクって速い!」
「凛ちゃんはこういうのでテンションが上がるタイプか…。」
私は純粋に景色を楽しみながら、リラックスし始めていた。
工場の中をひたすら走って、走って、走って。
大きな工場のような建物が一つ、見えてきた。
竜司くんはその建物の前でスピードを落とし、バイクを車庫のようなところに入れた。
そこには竜司くん以外のバイクも大量にあった。
「疲れたよ〜…」
「お疲れさん。」
私たちはヘルメットをとり、建物の中に入っていく。
裏口のようなドアを開けると、殺風景な通路だった。