パティシエ総長さんとコミュ障女子

コツ、コツと私たちの足音が廊下に響いた。

突然、視界が開ける。

大きなホールのような空間だ。

学校の体育館のように、高いステージがあった。

そして、いろいろなところに、人が散らばっている。

その全員が、竜司くんを見た途端、立ち上がった。

次の瞬間。


「こんちわーっす!」


ホールをビリビリと震わせるような声と共に、全員が竜司くんに向けて頭を下げた。

その迫力に、私は思わず飛び退いてしまった。

竜司くん本人は、よ、と手をあげて軽く挨拶をしている。

飛び退った私は、恐る恐る竜司くんの隣に立つ。

一気に視線が私に注がれる。

怖……。


「竜司さん、その子は?」


近くにいた人が竜司くんに尋ねる。


「…友達だ。」


友達!

今まで、彼は私のことを紹介するときに、「バイトの子」と言っていた。

そうかそうか、私もとうとう「友達」に昇級か。

ちょっと緩んでしまう頬を必死に真顔に戻した。


「へぇ……いつもみたいに『姫』の座狙いで着いてくる女じゃないんですか?」


驚いたようにそう言うその人に、竜司くんはただ一言。


「違う。これから凛ちゃんのことは絶対に悪く言うなよ。」


低い声でそう言って、私の手を引いた。

うっ…怖いよ…。

周りの人たちは、私を見てポカンという顔をしていた。


「宮川さん…?」

「お、ツナちゃんじゃん!」


その時、突然よく知った声が聞こえてきた。
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