パティシエ総長さんとコミュ障女子
「慎吾!瑠衣!」
二人は、今、ホールに入ってきて、竜司に一度頭を下げて近づいてきた。
「どうしたのツナちゃん。双竜会見学?」
「うん…まぁ、そんな感じなのかな…?」
助けを求めて竜司くんを見上げると、彼は頷いていた。
良かった。この言い方で合っているんだ。
「じゃあ僕らが案内しましょうか?」
慎吾が言った。
「いや、良い。俺がやるよ。」
竜司くんがそう答えた。
あれ、いつまで手を繋いでいるんだろう。
私は今更そんなことに気づき、恥ずかしくなってそっと竜司くんの手を払った。
その時、ワン!と声がして、タタタタ…と速い足音がする。
犬の足音だ。
……え?犬!?
あまりにも自然過ぎてスルーしそうになって慌てて状況のおかしさに気づいた。
なんで犬が!?
ホールに続く別の扉から、白い犬が飛び込んできた。
「わふっ!!」
下を出してハァハァ言いながら、瑠衣の足元にじゃれつく。
「ホ、ホワイト・シェパードだ!!」
思わず大きな声を出してしまう。
ホワイト・シェパード・ドッグは、主にスイス原産で、嗅覚に優れ、聡明で比較的友好的な性格を持つ。
私を見上げたシェパードが、足元にじゃれついた。
ふわふわの毛が脚に当たり、可愛らしい顔が私に向けられる。
「か、可愛いっ…」
今、私は最高にデレた顔をしているのだろう。
恥ずかしいけど、それよりもシェパードが可愛すぎる。