パティシエ総長さんとコミュ障女子
……ぎゅっ
そっと腰を引き寄せられた。
「りゅ、竜司くん…?」
私を引き寄せた本人を見て、驚く。
綺麗な横顔がにこりと笑った。
「はいはい、凛ちゃんが困っているからまた今度ね。」
竜司くんが私を、双竜会の人たちから引き離してくれた。
「あ、ありがとう…。」
不覚にも一瞬どきりとしてしまい、竜司くんから離れた。
瑠衣と慎吾が群がる人々を掻き分け、私の通り道を作ってくれた。
「凛さん!」
後ろで一際大きな声がした。
振り向くと、先ほど「壮助」と名乗った人が私に手を振っていた。
「今度話しましょ!!」
なんなんだ…この人。
あまりにもまっすぐな瞳で見つめてくる。
まぁ、でも悪い人ではないのだろう。
私はちょっと手を挙げて挨拶した。
「行くぞ。」
竜司に再度手を引かれ、私はホールを出る。
「双竜会本部を案内してやるよ。」
私を見て笑った竜司くんの顔は、いつものように美しかった。