パティシエ総長さんとコミュ障女子
今までにも、たくさん、竜司さんの隣に立とうとした女を見てきた。
だけど、ここまで竜司さんの「隣」が似合う人はいなかった。
「竜司さん、その子は?」
俺は竜司さんに1番近い位置にいたから、竜司さんに尋ねた。
「…友達だ。」
驚いた。竜司さんが自ら女を友達、と言うなんて。
女の子は、怯えたように竜司さんの隣にいた。
「へぇ……いつもみたいに『姫』の座狙いで着いてくる女じゃないんですか?」
竜司さんに群がる女はいくらでもいる。
それこそ、双竜会の総長の恋人、双竜会が総力をあげて守る存在、『姫』を狙う女の数は、数えきれない。
この子も同じなんじゃないかと思って、そう聞いた。
別に、嫌味を言おうと思ったわけではなかった。
しかし、竜司さんはぎろりと俺を睨んだ。
眼光の鋭さに、怯んでしまう。
「違う。これから凛ちゃんのことは絶対に悪く言うなよ。」
凛…この子の名前か。
竜司さんが庇う女の子なんて、そんな子がいるわけがない。
そう思っていた…のに。
女の気配なんて全くしなかった竜司さんが、こんなに綺麗な女の子と仲が良かったことに、驚いて、空いた口が塞がらなかった。
突然、ホールに、双竜会の幹部の瑠衣と慎吾が入ってくる。
凛さんは、その二人と知り合いなようで、かなり親しげに話している。