パティシエ総長さんとコミュ障女子
本当に、見れば見るほど綺麗な人だ。
その時、カザミが走ってきた。
「ホワイト・シェパードだ!」
凛さんは一瞬でカザミの犬種を言い当てた。
カザミは、双竜会全体で飼っている犬で、戦闘などでもよく活躍してくれる。
カザミが、凛さんの脚に擦り寄った。
あの位置からだったらスカートの中も見えるんだろうな…。
「羨まっ……」
またもや口の滑りそうになった俺を、隣の奴が小突いた。
危ない危ない、変態になるところだった。
いや、すでに変態か…。
俺は脳内で良くないことを一瞬でも考えてしまったことに反省した。
「か、可愛い〜!」
目を疑った。
さっきまでクールな印象だった凛さんが、カザミを抱きしめて、デレた顔をしている。
ドクンっ……!
心臓が跳ねる。
か、可愛い……!
これは、カザミのことじゃない。凛さんのことだ。
俺の周りの奴らも、凛さんのデレ顔を見て、目をそらせたり、口を押さえたり。
凛さんの笑顔は、一瞬で俺らに刺さるほど破壊力が強かった。
頬を染めて、眉を下げて、目を細めた彼女の顔は、俺の心を見事なまでに打ち抜いた。
ポーカーフェイスの竜司さんまでもが表情に出るほど刺さっている。
俺は、気づいたら凛さんの近くまで行っていた。
「凛さん!俺、壮助って言います!」
立ち上がった凛さんに向かって、誰よりも早く自己紹介をした。