パティシエ総長さんとコミュ障女子
周りの奴らも、われ先にと凛さんに話しかける。
こ、コイツら…みんな凛さん狙いか!?
ライバルが多すぎる!!
周りを見て絶望した。
しかも、すぐに竜司さんに粛清されてしまう。
竜司さんも、「友達」という割には凛さんを気に入っているみたいだ。
竜司さんに連れて行かれる凛さんに、何か残したくて、俺は何も考えずに叫んだ。
「凛さん!」
彼女はゆっくりと振り返った。
美しい二つの目が俺を捉える。
や、ヤバい、声をかけたは良いが、何を言ったら良いんだ!?
テンパった俺が言った言葉は、ただ一言。
「今度話しましょ!!」
我ながらワードチョイスを完璧にミスった。
凛さんが驚いたような顔をした。
それでも、微笑んでくれて、俺に手を振ってくれた。
心臓がぎゅうっと縮まるような感覚がした。
あーやばい、これ、一目惚れっていうやつだ…。
俺は胸を押さえてその場に立ちすくむ。
その場にいる奴らの大半が、ぼーっと凛さんを見つめていた。
あぁ、あーいうのを「魔性の女」って言うのか…。
でも、凛さんは悪魔じゃない。どう考えても、天使だ。
天使は、俺たちの心を無自覚に打ち抜き、通路へと消えて行った。